製品作りは人づくりから始まる。技術者にとって最高の環境を。
長野オートメーション株式会社
代表取締役社長 山浦 研弥
1973年10月30日生まれ。長野県上田市出身。大学卒業後ソフトウェア開発エンジニア、IT企業の創業を経て2013年に同社入社。営業部長、専務取締役を経て、2015年に代表取締役社長就任。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。
長野に技術者が自分の実力を試せる会社があることを伝えたい
長野オートメーションはFA(ファクトリーオートメーション/自動化、省力化)装置の開発、製造を手掛けています。製造業ではありますが、お客さまの要望に応える仕事なので「毎回作るモノは違う」という点が、一般的な製造業とは異なります。アピールしたいのは「長野の山奥に、技術者冥利に尽きる仕事しか取らないような会社がある」ということ。それに興味を持ってくれるメンバーを集めたいと思っています。
技術者はやはり、自分の実力を試したいのだろうと思うんです。でも、会社や業務によっては、同じことの繰り返しになる。それに飽きているけれど、「世の中の企業ってどこもそういうもので、社会人の人生ってそういうものだ」と考えているのではないでしょうか。でも、当社は分野や業種、国も含めて、ある意味見境なく、新しい仕事だけを取り続けて、必死になって取り組んでいる。
例えば、自動車メーカーやスマホメーカーに在籍している技術者が、飛行機の仕事に携わりたいと思っても、それは不可能なわけです。しかし、当社の場合は自動車の仕事もあるし、飛行機の仕事をやりたいと思ったら探しにいける。そして翌年は飛行機の仕事をしているかもしれない。隣ではスマホの仕事をしているし、電池も作っていると、とても領域が広い。
しかし、学ぶべきことはFAというキーワードに尽きます。「その技術をどこに生かせるか」ということだけを、必死に考えてやっている。そうすると、結果、世の中にあるすべての企業がお客さまになる。そこにぜひ魅力を感じてほしいですね。
欲しい人材は技術者として貪欲な人。その存在が営業になる
技術者の採用を考えるとき、まずは貪欲さがあれば、こちらが否定する理由がないですね。逆に言うと、その貪欲さがないと育たない。自分が考えたことを世に出してみようという意識があるかないか。それがあれば、その人は当社にいる限り育っていくと思います。当社への転職理由として、こうした環境に魅かれてくるメンバーも多いです。
同じ業界で転職している場合、手掛ける仕事は同じだと思うのですが、違うところは私や先代の会長の方針でしょう。新しいものを飲み込んでから考えようという我々と、安全な経営を目指す経営者との違いは正直大きいと思います。
3年程前に競合会社から転職してきた社員も、20数年務めたところの事業方針がつまらないという理由で辞めて、縁もゆかりもない長野にIターンでやってきました。こうやって集めた技術者の存在が、当社にとっては営業になるんです。
当社は「製造業であって、製造業でない」という面があって、お客さまが望む機械を作るので、そもそもは何もない。そうすると、売っているもののメインは「人」。その「人」を買ってくれるから、その人が作ったものを買ってもらえる。だからこそ、メンバーを集めておくことが、外向きの営業になるんです。
歩んだ道のりの集大成として、ここで躍動するメンバーたち
いろいろなキャラクターを採用してきた結果、各年代ごとのプレイヤーも、上に立つ人間もすべて揃い、最近ようやくまとまった組織になってきました。メンバーの経歴はさまざまで、マネージャークラスも生粋の長野オートメーション育ちもいれば、中途採用者も数年前入社、10年前入社、20年前入社といろいろです。皆、ベースになっている経験が違っていて、それぞれがこれまでの経験の集大成として当社にいる、という印象です。
転職で来る人にとっては、お客さまの幅の広さは気に入ってもらえるポイントのようです。自分の経験したエリアもあるし、経験していないものもあるということで、すぐに貢献できる仕事もあるし、チャレンジできるチャンスもある。そういった点では安心できるのかもしれません。
私自身は18歳までこの上田の地にいて、関西の大学を卒業後、大阪で2つのIT企業で働いて、独立。起業した会社は、後にアメリカの会社に譲渡しましたが、体調を崩したのをきっかけに長野に戻り、父の会社を継ぎました。
帰ってきて気づいたのは、この会社のやり方はIT系企業と一緒だということ。システム開発をしている会社が何を宣伝しているかというと、「こういうことができるプログラマーがいます」「こんな技術を持った人材がいるので、お客さまのご要望のシステムを作れます」ということ。それは、当社とまったく一緒なんです。それが分かったタイミングから、「技術的な貢献はできないけれど、IT業界でやってきた経験がそのまま生かせるし、技術者たちのマインドのあり方も想像がつく。それなら自分もここでやれるかな」と考えるようになりました。
会社員時代に自由に仕事をさせてもらったことが今に繋がっている
先ほど話に出た、競合会社から転職してきた社員は、外から当社の方針などを見ていてうらやましかったらしいです。それは多分、自分のやりたいことができるということ。冷静に考えてみれば、やりたいことが全部できる会社なんて、本来は無いでしょうが、当社の場合は技術的な方向性のものであれば、やりたいことをやっていい。
もちろん、お客さまからの要望に対する、ものづくりの本来やるべき基本はあります。でも、そこから完全に外れていない限りは、自分の好きなアレンジをして構いません。それが新しいアイデアに繋がれば褒められるし、失敗だったら自分の頭の中を考え直せばいい。それをやらせてもらえるかどうかだと思います。
私自身もIT系企業のサラリーマン時代、そうやってきたので彼らの気持ちが分かる。製薬会社向けにソフトウェアの販売をしていたのですが、会社が作ったものではなくて、私の作ったものを既存商品かのように紹介して販売していた。
それでも、アメリカの会社だったおかげもあって、そういった商品開発も自由にでき、会社からも評価されたんです。ですから、私はすごく自由にできたし、売り上げもトップでした。会社のルールに縛られた中でしか仕事をできなかったら、つまらなくなっていたと思います。
だから、いろいろなことをやってみたいという技術者の気持ちがよく分かる。自分でやることは勉強になるはずで、必ず次につながる。ルールを破ったときは、一応考えてねとは言いますが、勝手にやったからといって、やった内容を評価しないのは間違っていると思います。
人をつくることが、この会社の事業計画である
売上だけでいうと、昨年は50億円でしたが、この会社のポテンシャルとしては、倍の100億円はいけると思っています。それを、現在の規模のプラスアルファで、どう実現できるようにするかが課題です。
そして利益率は、製造業でも2割にできると思っています。当社の場合、お客さまの生産性にしっかり寄与できるものを作れば、高く評価していただける。お客さまの満足ポイントをすべて満たす仕事が常にできるようになったら、実現できると思っています。
だからといって、数字だけを目指すつもりはまったくなくて、一番注力していきたいのは、社員を高いマインドを持つ人間へともっていくこと。人をどうやって作っていくかが、この会社の事業計画です。
彼らに、自分たちがどれだけ世の中に貢献していて、自分たちの活動によって世の中の誰かの生活が支えられていて、その結果、自分たちもそのモノを使っている、というサイクルの意味合いをもっと理解してもらうことが必要だと思っています。
さらに人と人の関係性が、どれだけ事業に影響しているかを理解してもらうこと。その啓蒙を続けることで、数字は勝手についてくると考えています。
別の側面の理由としては、当社の仕事は自動化できないんです。自動化機械を作っているけれど、自分たちの仕事は自動化できない(笑)。だからこそ、人を作らないといけない。
「自分たちの考え方そのものが経営につながっている」というところまで社員全員に理解してほしいし、信念として持つところまでいってほしいと思っています。