株式会社浜島精機
山本正仁さん(品質保証) 58歳
58歳からの新天地。品質保証畑30年の経験を評価され、満足度の高い転職を実現。
新卒で入社した会社で58歳まで勤め続け、定年まであとわずか。そんな山本正仁さんが転職を決意した。きっかけは、90歳を超えた母のそばで暮らしたいと思っていた時に、実施された早期退職者募集。
40歳を超えると一気に難易度が上がると言われる転職市場だが、山本さんの「長年の経験」を欲しがる成長企業は確かに存在した。母のために決めた転職だが、自分の仕事を犠牲にはしない。久しぶりの故郷で、山本さんの第二のキャリアが始まった。
(※本記事の内容は、2018年1月取材時点の情報に基づき構成しています)
- 過去の
転職回数 - 1回
- 活動期間
- エントリーから内定まで30日間
転職前
- 業種
- 精密電子機器
- 職種
- 生産技術→品質保証
- 業務内容
- 大手製造メーカーにて生産技術12年、品質保証25年のキャリア。海外赴任もご経験され、部長職も歴任。マネジメント経験も豊富。
転職後
- 業種
- 金属加工業
- 職種
- 品質保証
- 業務内容
- 品質保証の部門長として入社。同部署の組織化、ISO管理、新規品質規格の取得など、ご経験を活かし品質保証に関わる様々な課題に取り組まれている。
早期退職制度を活用し、母の住む故郷で転職活動
現在のお仕事はどんな内容ですか?
浜島精機は金属切削の請負加工を手掛けている会社です。現在は、航空宇宙関係と半導体製造装置の部品製造が大きな2本柱。私は前職で長くメーカーの品質保証分野に携わってきており、現在も品質保証全般が主業務となっています。
航空宇宙産業向けの品質マネジメントシステムにJISQ9100という規格があり、浜島精機も認証を得ています。本年、JISQ9100において2016年度版への大幅な改定がありましたが、その対応で品証経験者を求められていたことも、私が採用された背景にあると思います。
また、業容が拡大基調にある中、より合理的な生産管理システムの構築が必要ではないかと感じ、提案・実践を行っているところでもあります。
入社前のご経歴を教えてください。
長野県飯田市に実家があり、県外の大学の工学部を卒業後、長野県内の電子機器メーカーに就職しました。最初の7~8年は技術系の仕事に携わり、その後、品質保証の部署に異動。そこから約30年、ずっと品質保証全般に関わってきました。
製品の設計審査・出荷判定や顧客対応のほか、QMS(品質マネジメントシステム)認証対応も何度か経験。ISOの取得から関わって毎年の監査にも参加していたので、勘所はわかっていました。品証部長の役職を最後に2016年9月末で退職し、12月から現職に就きました。
今回の転職のきっかけは?
前職の勤務地は松本市近辺で、近くの塩尻市に家も建てていました。しかし、今年で91歳になる母が一人暮らしをする飯田市までは少し遠い。しかも、前職では国内外への単身赴任も多く、退職直前の勤務地は千葉県でした。
なかなか実家に帰ることもできない中、「そろそろ母を一人にしてはおけない」と思っていた時に、早期退職の募集がありました。定年前の退職による優遇措置もありましたし、言わば「渡りに船」で申し込み、飯田市で仕事を探すことになりました。
転職活動はどのように進めましたか?
前の会社の早期退職の優遇特典として、会社が契約した転職コンサルタント会社を利用することができました。そこで、最初はその会社とハローワークを使って活動を始めたのですが、どうにもらちが明かない(笑)。このままでは難しいと思い、ネットで転職サイトをいくつか調べた中で見つけたのが、リージョナルキャリア長野でした。
エントリーしたところ、すぐにコンサルタントの太田さんから電話をいただいて、松本の事務所を訪ねました。希望条件は、まず勤務地。飯田市の実家に近い方がいい。とはいえ、できればこれまでの経験を少しでも活かせる仕事があればとお願いしたところ、その場で4社ほど候補となる会社の情報を見せていただきました。その中の一つが浜島精機です。
太田さんは実際に各社に足を運んでおり、浜島精機の経営陣とも直接話をして「JISQ9100を取得する予定なので、品質保証のわかる人材が欲しい」というニーズをつかんでいました。これが私にとって大きかったですね。おかげで転職先がすんなり決まり、大変ありがたかったです。
今の会社に入社を決めた理由は?
他の3社は松本市近辺だったので、飯田市にある浜島精機から優先的に話を進めていただきました。面接に行くと「いつから来られますか?」と、すでに会社側は採用前提の空気だったので、ホッとしました。その頃、ハローワーク経由で書類を送っていた数社からすべて不採用通知を受け、やはり年齢のハンディは大きいのかと少しへこんでいた時だったので、嬉しかったですね。
ある程度の規模の会社で品質保証について一通りのことはやってきたので、これから組織を作っていくような小規模の会社であれば、多少は重宝していただけるのかなと思いました。飯田市で働けることが第一の決め手ではありましたが、やはり私はモノづくりが好きなので、現場が近いことや、前の会社とはまったく違うものを扱っているという点にも興味が湧き、入社を決めました。
経験を活かし、自由度の高い職場で好きな仕事に取り組む
転職してから9カ月ほどですが、振り返っていかがですか?
総合的に見て、良い転職ができたと思います。仕事内容にも満足していますが、職場の雰囲気もアットホームで居心地が良い。周囲には懐かしい「飯田弁」が飛び交っていますし、本当に「地元に帰ってきたな」という感じがします。
それと、「自分がこれまで経験してきた仕事が役に立つ場所に来られた」という充実感もあります。経験者として重宝がられるので、多少は貢献できているのではないかという自負もありますね。
今後の課題、抱負はどんなことですか?
今の会社の生産管理は、ベテランの経験や気配りでうまく回っているようなところがあるのですが、今後事業を拡大していく中で、もう少し組織化、システム化をした方がいいと感じる部分があります。そういったところに、多少なりとも自分の足跡を残すことができたらと考えています。
自分のできることをやって「そう言えばこれは山本がやったんだな」と、後から言ってもらえるような仕事ができるといいなと思っています。
ベテラン社員の頭の中にあることを一度きちんと整理して、誰もが情報を取り出せるようにする。私がいる間にそんな仕組みをカタチにしたいと考えています。会社もそういう試みを許してくれていることがありがたいです。
今の会社に転職して良かったと思うことは?
何より、故郷に帰って就職できたこと。母も喜んでくれていますので、良かったと思います。そして、仕事の上でも好きなことをやらせてもらっていること。
前の会社の早期退職にあまりためらわなかったのは、納入先からの求めに応じるばかりの仕事に少し飽きがきていたというか、「もうそろそろいいかな」という気持ちになっていたこともあるのです。その点では、今は好きなことができるようになってやりがいを感じていますし、満足度は高いですね。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
「58歳が地方で職を探す」というと、非常にハードルが高そうですが、求人は決して少なくないと感じました。探してみる価値はあると思います。私の場合は、太田さんのように自分の足でニーズを探しているコンサルタントと出会うことができたので、本当に運が良かった。ただ転職支援会社もいろいろなので、一回で諦めず、広く当たってみることも大事だと思います。
それから、定年を過ぎて同じ会社で雇用更新されても、給与が大きく下がり意に沿わない仕事をすることになる場合が多いのではと思います。私の場合は、前の会社で雇用更新をするつもりはなかったので、定年退職とその後の再就職が1年早まった感じでした。
幸運にもそれが理想的な形になったと思いますが、「我慢して雇用更新するくらいなら、転職した方がいい」というのが私のアドバイスです。今の会社も定年は60歳なのですが、前例がないので先のことはこれから。ただ「長くいてほしい」とは言っていただいており、見通しは悪くありません(笑)。