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先代から受け継いだ技術をもとに、社員と共に歩む若手社長の挑戦。

株式会社コヤマ
代表取締役社長 百瀬 真二郎

更新日:2023年10月18日

1989年生まれ。長野県松本市出身。
2011年 地方銀行へ入行。
2018年 株式会社コヤマ入社。
2022年 代表取締役社長就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

縁に導かれてスタートした、コヤマでの新たなキャリア。

コヤマは1945年に創業した会社で、自動車や建設機械などの部品を、鋳造という加工方法を用いて生産しています。金型の製作から、後工程の機械加工に至るまで、すべての工程を自社で完結できる一貫生産体制を整えており、大手自動車メーカー様や大手建設機械メーカー様らと直接お取引をしています。

鋳造には製品の品質や精度を決めるバリ取りという重要な工程があり、その工程を自動化する設備として「バリンダー」という機械を開発しました。このバリンダーは世界からも注目され、世界9か国で特許を取得する工業用機械として評価をいただいています。

私は神奈川県の生まれですが、1歳ごろから父の地元である松本で育ちました。大学卒業後は地元の銀行に就職し、東京、新潟、長野での勤務を経験したあとコヤマへ転職しました。コヤマとの縁は、先代社長の娘である妻と結婚したことがきっかけです。結婚当初は転職について具体的に考えることはありませんでしたが、いろいろな変化の中で決断に至りました。

経営者としての礎となった製造現場での実習経験。

私は入社後、現在の総務部海外企画課の前身である「海外事業室」という部署で、海外の現地法人の財務や法務管理などを担当しました。さらに、入社して1年間は現場実習の期間として、すべての製造現場を数週間ずつ回って業務理解に加えて従業員と接点を持つ機会を得ました。

もともと銀行の出身ですので、製造業はまったくの素人です。本当にゼロからのスタートでしたが、1年かけて製造現場の作業を経験できたことは非常に大きな財産となっています。

私の後に入社したマネジメントを担う人材にも、なるべく現場実習を経験してもらっています。やはり現場あっての製造業、現場を知ってこそのマネジメントですから、デスクワークだけでは得られない学びや気付きを大切にしたいと考えています。

私が代表取締役社長に就任したのは2022年2月ですが、それ以前から副社長として先代社長と2人で代表権を持って経営に携わってきました。

入社してからの5年間にもいろいろな変化がありましたが、1945年の創業から築き上げた実績やお取引先さまとの信頼関係、当社で長く働いてくれているメンバーに支えられていることは、本当にありがたく心強いと思います。

循環型社会を実現するためにコヤマが目指す未来の姿。

当社が目指す姿は、お客さまにも地域にも求められる存在であり続けることです。その取り組みの一環として、循環型社会の形成を目標とした活動をしています。具体例としては、鉄を溶かす際に使う化石燃料を自然由来の燃料へと置き換えることを進めています。

長野県はキノコの栽培が盛んですので、キノコを育て終えた菌床で廃棄するものを燃料にしたり、木材の加工で出た端材などの廃材を燃料にしたりする再利用の取り組みを始めました。

今まで菌床や木材を廃棄するのにお金がかかっていた事業者の皆さまにとっては、当社が買い取ることで収益に転換されるといったプラスの効果があり、地域全体のCO2排出量の削減に向けてという意味においても、廃棄されるものを循環しながら使うことが大事だと思います。

近年は近隣の小学校から工場見学を受け入れることにも力を入れており、昨年は1,800人ほどが見学に来てくれました。従業員自ら「せっかく来てもらうのだから、一生記憶に残るものを伝えたい」ということで、子どもにもわかりやすく、体験もできる内容へとリニューアルして実施しています。

世界の環境問題と、これに対する当社の取り組みを伝えることに加えて「自分たちの住む地域ってこんな場所なんだ」「こんな会社があったんだ」と少しでも知ってもらうきっかけになればいいと思いますし、何より地域の一員として、子どもたちがさまざまなことに触れられる機会がある環境づくりに貢献できればと考えています。

一緒に働きたいのは、専門力よりも「人間力」がある人。

現代社会では、環境問題への対応や、労働人口の減少に伴って専門性の高い人材が求められる時代になったと言われます。しかし、私はすべてのベースとなるのは「人間力」だと考えます。「この人が言うなら一緒にやろう」という魅力がなければ、物事は進んでいきません。ですから、当社が一緒に働きたいと思うのは、素直さ・誠実さ・謙虚さを持ち、誰に対しても敬意や感謝の気持ちをきちんと表せる方です。

当社の鋳造という事業は、多くの方にとってピンとこないものです。学校でも鋳造という言葉を聞くことはないと思いますし、現場を見たとしても工程が複雑ですぐに理解するのは難しいでしょう。

ですから、入社前に鋳造に関する知識があるかどうかは考慮していません。鋳造や機械加工など、業務に必要な知識や作業のノウハウは入社後にしっかり教えます。

むしろ経験のない人材が大勢いたほうが、「こういう伝え方だとわかりにくいかな」とか「このやり方では全員同じ品質でできるようになるのは難しいのかも」など、教え方や業務の進め方の面でさまざまな課題が見えてきます。会社としては、広く門戸を開けて多様な人材が活躍できる環境づくりを進めています。

急激な社会変化に適応するには、挑戦者のマインドが不可欠。

私がいつも大切にしている考え方は、何事も「こうあるべきだ」と決めつけずに臨むということです。特に、環境の変化が激しい今の時代、何かに固執するあまり変化を見逃してしまってはいけません。

私がコヤマに入社した頃は、まだ職人気質や縦割り組織の雰囲気が少し残った会社でした。しかし「部分最適ではなく、全体最適を考えてやっていこう」とマネジメント層に声をかけたことで、上司から部下への一方向の情報伝達だけでなく、徐々にいろいろな階層や部署の従業員が縦にも横にもつながっていく風土に変わっていきました。

その過程では、キャリア採用で入社した人材が自主的に行動してくれたことも大きな追い風だったと思います。もちろん、もともと当社で働いているメンバーも行動力は持ち合わせています。しかし、長く働く組織の中で急に変化するのは、多くの人にとって難しいものです。外から来た人の声を聞くことで、お互いに「そういう考え方もあるね、もっとこうなったらいいね」と意見を出しやすい環境になっていったのかもしれません。

「今までこうやってきた」とか「過去はこうだった」と言うのは簡単ですが、そのままのやり方で10 年や20 年も続けていると、会社は衰退するばかりです。外部環境に合わせて柔軟に変化し、お客さまのご要望に応えながら、プラスアルファまで提案できる会社でないといけません。このためには、常に新しいことに挑戦していくマインドを組織全体で持っていたいですね。

創業から75年を超える歴史と、従業員600名という先代から引き継いだ人材・技術を大切にしつつも、いつでも挑戦者の気持ちで幅広いことに目を向け取り組んでいこうと思います。

仲間を集め、共に高め合いながら会社を成長させていきたい。

これからの世の中は、多くの企業にとって初めてのことばかりが起こる時代だと考えます。誰も経験したことがないのですから、既存の枠組みを超えて一緒に挑戦できる仲間を集めることが重要です。

いざ環境が変わってから慌てて動いても手遅れですので、当社の従業員には日頃から自ら考え、行動するようにしてもらっています。私をはじめ、役員や管理職自身も学ぶこと、実践することを怠らず、みんなで挑戦する機会をさまざまな場面を通じて従業員に提供しています。

「これさえできればいい」ではなく、さらに自らを高めていこう、もっと広い知見を得ようという思いを持った人とぜひ一緒に働きたいですね。日本に限らず、世界中で大きな課題が山積していますが、これに対処するための循環型社会を構築していくことはもちろん、地域全体や日本全体の成長に携われる事業がコヤマにはあります。

当社は60代後半だった先代社長から30代前半の私にバトンタッチしましたが、一人の知恵には限界があります。企業が永続的に発展していくには、やはり従業員一人ひとりが考えて行動する組織であることが重要で、これができる組織は大きな危機に直面したときにも強い力を発揮します。

私は幸いなことに「しっかり会社を守っていきたい、もっと良くしていきたい」という思いを強く持ったメンバーに恵まれました。私自身のビジネスのキャリアも、社長としての道のりもまだ始まったばかりです。従業員が「こんなことをしたい」と届けてくれる声にしっかり向き合いながら、今後も変化を恐れず挑戦し続けたいと思います。

編集後記

コンサルタント
浦野 順也

何度か工場見学をさせていただいていますが、工場全体で整理整頓が行き届いており、働く皆さんの創意工夫の積み重ねを感じます。それは、常により良いモノ作りを追求する社風の表れだと思います。

また、弊社の転職支援によって入社された方にもお話を伺いましたが、設備投資や品質改善など、良いものはどんどん取り入れる文化があるとのことでした。

若く意欲的な百瀬社長の目指す循環型社会の実現に向けて、社員、地域、取引先、お客さまとともに、私たちもその一員としてお手伝いしていきたいと思います。

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